「辞めよう」と思ったとき、一番最初に連絡したのは、リカ先輩だった。
リカ先輩は、法人体制が変わってから比較的すぐに退職した人。私より先にこの職場の変化を感じ取り、見切りをつけたのだと思う。おっとりしていて優しいリカさんが、スパッと退職していったときには、本当に驚いた。
辞めた当初は「新しい職場を探してる」と言っていたけど、半年経った今、どうしているんだろう…。
それから、もうひとり連絡を取ったのが、私が本当に尊敬しているハル先輩。なんと3月末で辞めてしまう。
この度、退職を決意したと聞いて、「やっぱりこの職場はもうダメなんだ」と改めて実感した。
リカさんとハルさん、そして私の3人で、ご飯を食べに行くことになった。
お店は、アットホームな焼き鳥屋さんをセレクトしてみた。
リカさんとハルさん——私が信頼する2人
リカさんは、とにかくおっとりした人柄と、面倒見の良さで、誰からも好かれるタイプだった。
私もよく相談に乗ってもらったし、プライベートでも仲良くしてくれて、まるでお姉さんのような存在。
手先が器用で何でもできる人で、子どもの卒業式の日には、わざわざ私のために着付けまでしてくれた。
仕事でも細やかな気配りができる人で、先輩がいるだけで職場の空気が和らぐような。
そして、ハルさん。とにかく人の話を聞くのが上手で、優しい人。人柄が素晴らしすぎて、私はハルさんのことが本当に大好きだった。仕事でどんなにつらいことがあっても、「ハルさんがいるから頑張れる」と思えていた。
そして、そう思っていたのは私だけじゃなかったはず。
職場の看護師全員がハルさんのことを好きだったと思う。
みんな、ハルさんの人柄に救われていたし、相談するといつも優しく話を聞いてくれて、的確なアドバイスをくれた。
そんなハルさんが辞めると決めたことは、職場にとっても大きな損失だったと思う。

久しぶりに会う先輩たち。話すだけで心が軽くなった
先にお店に入っていた私をみつけるなり、「久しぶり〜!」と笑顔を見せてくれたリカさん。
半年ぶりに会ったけれど、相変わらず優しくて気さくな雰囲気だった。ハルさんも「こんな形で集まることになるとはね」と笑いながら、席に着いた。
最初は「最近どうですか?」なんて当たり障りのない話をしていたけど、結局はやっぱり職場の話になる。「今の職場、本当にキツくなりましたよね」と私が言うと、ハルさんも深く頷いた。
「辞める決断をするまではすごく悩んだけど、正直、今の状況で働き続けるのは無理だった。」
尊敬していたハルさんの口からそんな言葉を聞いて、「やっぱりそうなんだ」と少し安心した。自分の感じていた違和感やストレスは、決して気のせいなんかじゃなかったんだ。
リカさんの現実——転職は簡単じゃない
「それで、リカさんは今どうしてるんですか?」と聞くと、リカさんは少し苦笑いしながら「実はまだ次の職場が決まってないんだよね」と言った。
「えっ?半年も経ってるのに?」と驚く私に、「いやぁ、40代の転職ってやっぱり厳しいね」とリカさん。
「条件が合うところを探してるんだけど、なかなかね。給料は下がるし、働き方も選べるほど余裕がないって感じかな。」
リアルな話を聞いて、少し気持ちが重くなった。看護師の資格があれば、転職先には困らないって思っていたけど、自分の希望に合う職場を見つけるのは簡単じゃないんだと痛感した。
「でも、辞めたこと自体は後悔してないよ。あのまま続けてたら、心も体も壊れてたと思うし。」
リカさんのその言葉に、少し救われた気がした。
40代の転職、甘くない…?
ハルさんも、「実際に転職活動を始めてみないとわからないことが多いよね。でも、だからこそ情報収集が大事」と話していた。
「転職は勢いで決めるんじゃなくて、しっかり準備したほうがいいよ。」
そんな言葉を聞いて、私は「今すぐに辞めてしまうのもリスクかもしれない」と少し冷静になった。辞める決意は変わらないけれど、きちんと準備をしてから動くべきなんだ、と。
先輩たちとざっくばらんに話せて、心は少し軽くなった。でも同時に、「40代の転職は厳しいのかも…?」という不安がじわじわと湧いてきたのも事実だった。
焦らず、でも確実に進みたい
リカさんの話を聞いて、「次の職場は慎重に選ぼう」と改めて思った。自分の中で優先したい条件を整理し、焦らずに動くことが大事なんだろう。
この日は、先輩たちと「どんな職場なら働きやすいのか」「転職の成功例ってどんなケースがあるのか」なんて話をしながら、おいしいご飯を食べた。久しぶりにリラックスした時間を過ごせて、辞めることに対する罪悪感や迷いは少し減った気がする。
でも、これからの転職活動には、まだまだたくさんの壁があるかもしれない。
「私の転職、うまくいくかな?」
そんな不安を抱えつつも、転職活動の最初の一歩として「何から始めるか」を考えてみようと思う。
40代での転職、不安もあるけれど、後悔しないようにしっかり準備していこう。