有給休暇を終えて出勤|看護師の退職日が決まる

当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。

1週間の有給休暇を終えて、職場に戻った。

久しぶりの仕事復帰。
だけど、休みの間に 「私が辞める」 という話が広まっているかもしれない。
そんな不安を抱えながら、ドアを開けた。

けれど、
いつもと変わらない職場の空気。
同僚たちも、いつも通りに接してくれる。

…どうやら、まだみんな知らないみたいだ。

ホッとしたような、でもどこかソワソワするような気持ちのまま、午前中の仕事を終えた。

ボスからの呼び出し

午後、事務所に人がいないタイミングで、ボスに呼ばれた。

二人きりでの話し合い。
緊張しながら事務所の椅子に座る。

「お休みありがとうございました」と切り出す私に

「旅行どうだった?焼けたね~。」ボスは、いつもの調子でそう言った。

思わず「焼けましたね~」と笑って返す。
だけど、そのあとの言葉で、一気に空気が変わった。

「…退職の気持ちは変わらない?」

ボスの目を見て、しっかりと言う。

「変わりません。」

ボスは少しだけ、期待していたのかもしれない。
「あ~、やっぱりダメか~」と、苦笑いを浮かべた。

「今まで、ずっとリズに冗談ぽく『辞めないで』って言ってきたでしょ。そんなリズが辞めるっていうんだから、覆らないよね。もう引き留められないかな」

退職をあっさりOKされたのに違和感を抱いていたけど、そんな風に思っていたんだ。

ボスの涙…見間違いかと思った

「まずは、リズがやっていた仕事を引き継がないといけない。
でも、ハルも辞めて、人が少なくて…。」

ボスはそう言いながら、困ったように息をついた。

「他の看護師に振れない。だから、私がやろうと思う。
今までリズに全部任せていて申し訳なかったけど、
私に全部引き継いでほしい。

そんなボスの言葉を聞きながら、私は今さらながらに実感する。

自分がこの職場で担っていた仕事の大きさ。
辞めると決めたのに、こうしてボスが困っているのを目の当たりにすると、
やっぱり少し 「申し訳ない」 という気持ちが湧いてくる。

すると、ボスがふっとつぶやいた。

「…私はこの後、リズの存在の大きさと、自分の仕事のできなさを実感するんだろうな…。」

その瞬間、ボスの目から、ボロボロと涙がこぼれた。

えっ…?

うそでしょ。

9年間、ずっと一緒に働いてきたけど、
ボスが泣くところなんて 見たことがない。

患者さんのお看取りの時でさえ、ほぼ涙を見せない
体調が悪くても「気のせいだ」「気合いだ!」と言ってバリバリ働く鉄の女のボス。

そんなボスが、私の前で泣いている。

…びっくりしすぎて、言葉が詰まった。

「すみません。」

思わずそう言ってしまった私に、ボスは首を振った。

「いや、リズが謝ることじゃない。こっちこそ、リズを守れなくてごめん。」

その言葉が、胸に突き刺さる。

ボスも、戦っていたんだ。

新しい経営陣と、給料を減らされて不満の多い看護師たちの間に挟まれて、一番しんどいのは ボスだった。

でも、それを誰にも見せずに、ずっと頑張っていた。

そして、そんなボスを置いて、私はここを去る。

その瞬間、ものすごい 罪悪感 に襲われた。

それでも、私は辞める…?

だけど、決めたこと。
私はもう、ここで働き続けることはできない。

「ボスが辛いなら、私は残ります。」

そう言いたかった。
でも、言えなかった。

ただ、渡された退職届をすぐに書くことはできず、一旦持ち帰ることにした。

辞めることは、後悔しないと思っていたのに。

初めて迷いが生まれた。

ボスの涙は、それだけ破壊力があった。

そして、退職日は、3ヶ月後 に決まった。

これから2ヶ月間で仕事を引き継いで、1ヶ月は有給休暇を消化させてもらえることになった。

看護師が減って忙しくなるのに、有給消化をそんなにもらって良いのかな。

いろんな罪悪感にさいなまれる面談になってしまった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
List