新人看護師を先輩看護師がマンツーマンで指導・教育・フォローするプリセプター制度。
先輩看護師(プリセプター)は、担当する新人看護師(プリセプティ)を約1年間サポートします。
プリセプターのペアは、師長や主任が決定。
と感じている方、いませんか?
この記事ではプリセプターを2回経験した筆者が、その体験をシェアします。
しんどい2年間でしたが、学びや成長の機会にもなりました。
看護師3年目プリセプターが始まった
勤務していた職場では、3~4年目の看護師がプリセプターをするのが慣例。
私は看護師3年目にプリセプターを引き受けることになりました。
どんな子とペアになるのかドキドキ(ちょっとワクワク)。
当時の私とプリセプティのAちゃんを紹介します。
プリセプティは、Aちゃんになりました。
Aちゃんの第一印象は
そしてとても几帳面。
尊敬するくらい小さい字でぎっしりとメモを取っています。
病棟に配属された他の新人と比べても特別自信がなさそうに見えて、気になっていました。
プリセプターがしんどくなる
はじめはAちゃんのリズムに合わせて指導していたのですが、徐々にしんどくなってきました。
ちょうどAちゃんが夜勤を独り立ちしたころからです。
チームから一人ずつ夜勤が出るので、同じチームの私とAちゃんはシフトが合わなくなってきます。
日勤で同じ勤務になる回数も減り、直接のフォローができなくなってしまったのです。
先輩や同期からAちゃんの様子を聞く
勤務で会えないことが続くので、先輩や同期にAちゃんの様子を確認していました。
声が小さいから申し送りが聞こえない
慎重派すぎて仕事が遅い
すぐに泣きそうになるから注意できない
……結構厳しめの意見が届きます。
板挟みに感じる
自分にとっては可愛いプリセプティだけど、先輩や同期からの評判はいまいち。
そのうち、こんな風に板挟みに感じるように。
私がフォローしなきゃ!と意気込んでも、Aちゃんの声が大きくなるわけもなく。
自分はプリセプターに向いていないと落ち込む日々でした。
そしてハプニングが起こる
そんなある日。ハプニングが起こりました。
働き始めて半年以上たったころ。
日勤で一緒に働いていた夕方のことです。
そろそろ夜勤さんに申し送りだよ~とAちゃんに声をかけると…
突然、Aちゃんの目に涙が。
そしてカンファレンスルームに閉じこもり、内側から鍵をかけてしまいました。
(びっくりしすぎて変なところが気になる)
Aちゃんが扉越しに号泣しているのがわかります。
声をかけても「ほっといてください」と泣くばかり。
今までも泣くのは珍しくなかったけど、立てこもられたのはさすがに初めて。
しばらくすると鍵を開けてくれましたが
仕事が終わらないまま申し送りの時間になり、パニックだったとのこと。
プレッシャーでしんどかったのは、Aちゃんのほうだったのです。
自分ばっかりしんどいと感じていたのを恥ずかしく思いました。
そしてこのハプニングは、私をさらに落ち込ませました。
ポジティブ思考のはずの私の自信は、ゼロに。
プリセプターがしんどいのは自分だけではない
新人教育を重荷に感じる看護師は少なくありません。
それは先輩と新人の感覚の「ズレ」が原因なのかなと思います。
新人は「能力の不足にリアリティショックを感じる」という研究結果があります。
(参照:プリセプター制度の現状と課題)
忙しい病棟業務の中で、実力不足を実感しながら働くことはとても大変です。
厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」では、臨床に出てごく初期の段階ではプリセプターシップ制度でマンツーマンのフォローをすることが推奨されています。
しかし徐々に「チューターシップ制」や「チーム支援型」にフォロー体制を変えていくと良いそうです。
チーム支援型でフォローしていくのが良さそう
しんどかったプリセプターをどうやってのりこえた?
自分のプリセプターに相談してみた
ナースステーションでの号泣後、落ち込む私とは裏腹にAちゃんはなんだか元気。
前よりも相談してくれるようになったし、笑顔も増えて来た気がします。
なんか良い感じ?でもこのままでいいのかな。
そこで、自分が新人のときのプリセプターに相談してみることにしました。
Aちゃんが何考えてるのかわかんないっす。
(明るく扱いやすい後輩だと思っていた)
なんということでしょう。
3年目の真実。
あの子はしんどい時に泣く子なの
自分が生意気な新人だったという衝撃的な事実を知り
「プリなんてそんなもん」という先輩の言葉に肩から力が抜けました。
同期にフォローを頼んでみた
Aちゃんとは勤務がずれることが多いので、同期に指導やフォローを手伝ってもらうことにしました。
今までの表面的なフォローではなく「同期のプリはみんなのプリ」というイメージです。
一人で支えるのは無理!と周囲にアピールすることは有効でした。
「同期みんなで育てる」雰囲気によって、プレッシャーが少なくなっていったのです。
フォローで心掛けたこと
努力家なAちゃんは、知識も技術もしっかり身についてきています。
どうやったらAちゃんが自信をもって2年目ナースになれるのか。
そこで、以下のことを意識して関わることに。
成長を見つけてほめる
(これだけ)
単純かもしれないけれど、とにかく成長をほめました。
ただし慎重派なAちゃんは表面的にほめても自信が持てない。
だから、ラダーやチェックリストなどの成長を可視化できるツールを使いました。
そのほかにも
申し送りもわかりやすかったよ
こんな感じで評価表以外にも、成長を見つけたらほめまくります。
ミスをしたときには一緒に振り返りをして、数日後にメンタルフォローをするようにしました。
乗り越えた1年間!プリセプターをやりとげて自分も成長した
できないことばかりを指摘される現実は、絶対にしんどい。
まじめなAちゃんは、自分でしんどさを自家発電しちゃうタイプだったのかもしれません。
ほめてもなかなか自信につながらない慎重派さんには、評価表を使って振り返るのが効果的でした。
同期からAちゃんの様子を聞けるようになったのも大きかった。
そして…勉強熱心でまじめなAちゃんは、仕事ぶりが信頼できる看護師に。
声も少し大きくなりました。
しんどいことも多かったプリセプターだったけど
自分の生意気な新人時代を振り返り、先輩や同期のありがたみに気付くきっかけにもなりました。
看護師4年目は、プリセプターをやる後輩をフォローしてあげたいな~とのんびり考えていたところ…
なんと4年目もプリセプターを任されることになるのでした。